オーディションの経験が、物語の序章

福岡出身のサッカー少年が未知の世界に足を一歩踏み出したのは、高校3年生の頃だった。サッカー部を辞めたタイミングで、母親が応募した某大手事務所主催のオーディションに参加。3万人の参加者が20人ほどまで絞り込まれる段階まで生き残った。それまで芸能の世界にさしたる興味も抱いていなかったサッカー少年に、小さな野望が芽生えた瞬間だった。高校卒業後は、横浜国立大学に進学。関東の学校を選んだのは、「もう一度あの世界に挑戦したいという思いがあったから」だという。その決断が、物語の始まりだった。

オーストラリアの地で成し遂げた“変身”

大学在学中に演技のレッスンを受け、数々のオーディションに参加。単発ながら着実に仕事を得るようになる。卒業後、ミュージカル版『ワンピース』でフランキー役を獲得。そのころから本格的に俳優としての活動をスタートさせる。しかし、1年間にわたって舞台を務める間に、海外からの観客とのコミュニケーションや情報発信の必要性を感じて留学を決断。休業し、1年半に及ぶ海外生活に突入する。本人いわく、「軽い気持ちだった」だったが、オーストラリアでの濃密な日常は、Kentaを全く新しいステージに連れ出すことになる。

学び、鍛えることで、歯車が嚙み合い始める

滞在中に最も力を入れたのは、肉体改造。語学学校に通い、帰りがけにジムに向かって筋トレに励むというルーティーンによって、細かった体はボディビルダーのようなスタイルに変貌する。当初の目的であった英語力だけでなく、モデルとして、演技者としての財産となるボディを手に入れることにも成功した。その鍛え上げられたボディは、帰国早々に真価を発揮することになる。成果を試そうと参加した世界最大の男性ビューティーページェント大会『Mr. World』の日本大会で優勝。フィリピンでの世界大会も出場するという快挙を成し遂げたのだ。

新たなステージに向け、また物語が動き出す

『Mr. World』で得た国際的な人脈は、タイでのモデル活動に繋がった。本人は「運に恵まれた」と謙遜するが、それは類まれなる行動力と、ハードな肉体改造を成し遂げた、元サッカー少年らしい強いメンタルのなせる業だ。ところが、順調に見えたキャリアも、新型コロナ渦で一変。一時はお堅い職場での会社員生活も経験した。だが、物語はそう簡単には終わらない。コロナ騒動も落ち着き、日常を取り戻しつつある世界がKentaの新しいステージ。現在は、すでに確定している香港でのモデル活動を見据えて準備を進めている。軽やかなフットワークは、留まることを知らない。